皆さん、こんにちは!天龍丸
友貴です。
と言っても、はじめまして!…の方のほうが多いですよね? 実は2年前に公式サイトでデビューしたんですけど、リポートでドジばっかり やって仕事ホサレちゃって…。でも今回、WOAIテレビさんにお声を掛けて いただいて、シェンムーの世界から臨場感溢れるリポートをお届けすること になりました。今度こそ、失敗しないように頑張りますね!
ということで、皆さん、どうぞよろしくお願いします!
リポート Vol. 1
(2003年2月14日)
リポート Vol. 2
(2003年2月28日)
リポート Vol. 3
(2003年3月18日)
リポート Vol. 4 (2003年4月9日)
リポート Vol. 5 (2003年5月2日)
リポート Vol. 6 (2003年5月28日)
リポート Vol. 7 (2003年6月18日)
リポート Vol. 8 (2003年7月11日)
リポート Vol. 9 (2003年7月25日)

リポート Vol. 1
皆さん、こんばんは!天龍丸
友貴です。 えっと、私は今、新横須賀港に来ています。時刻は夜の10時50分。 さすがに、この時間になると人通りがありませんね。ちょっと怖いです。 さて、今回のお仕事は…っと。確かこの辺りのはずなんですけど…。
「ああ、ちょっとキミ!」 「え?」 「ここは関係者以外立ち入り禁止だ」 「そ、そんな!えっと、あの〜、取材許可は取ってあるって…」 「取材?」 「ええ、旧倉庫街の第8倉庫の…」 「ああ、それでしたら伺っております。どうぞお通りください」
ああ、びっくりした〜!あの警備員さんたら、いきなり怖い顔して…。 アタシがそんな怪しい人間に見えるぅ?まったくもう〜っ!
あ、失礼いたしました!え〜、何とか旧倉庫街の中に入れましたので、 これから第8倉庫に向かいます。ええと…壁に何か書いてありますね。 ん、6?あぁ、第6倉庫ですね。じゃあ、たぶんこっちのほうが…
「そこのお前!」 「え!また?!…あ、あの〜、取材なんですけど、第8倉庫の」 「ああ、それでしたら、ここをまっすぐ行って左です」
まったく、ここの警備員さんたちって、人を見る目がないんだから…。 失礼よねぇ、ホント!え〜、気を取り直して…っと。
どうやら第8倉庫は向こうのようです。第8、第8…っと。ん?あった! コレだわ!皆さん、ありました!やっと目的地に到着です。実は今から ココに、皆さんお馴染みのシェンムーの主人公、芭月涼さんがやってくる ことになっています。え〜、時計は11時を回りましたので、間もなくだと 思います。あ、懐中電灯の光が近付いて来ますね、涼さんでしょうか?
「あった!ここが第8倉庫だ!」 「あの〜、芭月涼さんですね?」 「え?そうだけど、何か…」 「あ、私、取材の者です。天龍丸
友貴と申します。実は、今日の涼さんの 第8倉庫侵入に密着させていただくことになってまして…」 「そうなのか?聞いてないけど…」 「A○-2さんのほうから許可をいただいてますので」 「なら、仕方ないか。邪魔はなしだよ」 「はい、それはもちろん」 「じゃ、入ってみるか」
え〜、たった今、涼さんが扉を開けて中に入っていきました。では私たちも 失礼して…。あ、カメラさん、気を付けて!
(小声) うわぁ、なんか薄暗いですね〜。何がどうなってるのかよく見えませんが、 あ、あそこに涼さんがいます。少し近づいてみましょう。何か大きな岩の ようなものを調べていますね。あっと、今度は棚の所に移動して、ツボで しょうか、持ち上げて中を覗いています。次は隣りのお皿を…。
あっ!急に明かりが点いて、涼さん、お皿を落としてしまいました!!
「誰だ!」
うわっ、大変です!倉庫の人に気づかれてしまったようです。涼さん、 隠れなくて大丈夫でしょうか?あ、足音が近付いてきます。マズイです!
こ、これは!ボディーガードでしょうか?グレーのダブルのスーツを着た男 が現れ、身構えています。何か独特の構えです。眼差しが鋭いですね〜。 あ、涼さんも身構えました。や、やばい!一戦交えるのでしょうか?!
「待ちなさい、貴章!」
あ、恰幅のいい、中国服のおっちゃ…んじゃない、老紳士が階段を下りて きました。貴章?…って、ああ、あのボディーガードのことですね。へぇ〜、 貴章っていうんですか…。もしかして彼も中国人でしょうか?そう言えば、 顔立ちも日本人離れってゆーか、中国人的ってゆーか…。ちょっと目つき がキツいですけど、男はシャープなほうがいいですよね〜、うふっ!
あっと、どこまでリポートしたかしら…。あ、そうそう、え〜、例の中国服の おっちゃ…んじゃない老紳士と涼さんが何やらお話をしています。それに しても、貴章さん…でしたっけ?スーツ姿がステキですね〜。赤いネクタイ も決まってます。ちょっとマフィアみたいですけど…。でも、今どき七三分け って珍しいですよねぇ。まぁ、私はどちらかというと嫌いじゃないかもぉ…。
「こんなガキに関わるのは止めてください、父さん!」
え!父さん?今、父さんって言いましたよね、貴章さん?ってことはあの おっちゃんの息子なんですね?それにしては似てませんねぇ、あの父子! でも、今の声、なかなかステキでしたね!私、ああいう声、タイプなんです よ〜。もう1度、何か喋ってくれないでしょうか?あ、あれ?貴章さん父子が くるっと背を向けて…。お話は済んだんでしょうか?私的には、もう一度 貴章さんのお声が聞きたいんですけど…。あ、涼さんが戻ってきます。
「俺は帰る」 「あ、お疲れ様でした!私はぜひアチラの方のインタビューを取りたいので、 どうぞお先に」 「そうか…もういいのか」 「ええ…あっ!すみません、貴章さ〜ん!」
「ん、誰だ、お前は?俺に何の用だ」 「はい。あの〜私、天龍丸
友貴と申しますが、ぜひ取材をさせていただき たいと思いまして…」 「悪いが、お前と話している暇はない」 「そ、そんな…お時間は取らせませんから…、あっ、行かないでください! 待って、貴章さん!貴章さ〜ん!」
あ〜あ、行っちゃった…ふぅ!ちょっとでいいからお話したかったのにぃ…。 それにしても、なんてステキな方なんでしょう、貴章さんって!今度ぜったい インタビューさせてもらわなくっちゃ。どうやってアポ取ったらいいのかしら?
えっ!あ、まだカメラ回ってるの?ど、どうも失礼しました〜! というわけで、今回のリポートは、旧倉庫街の第8倉庫からお送りしました。 リポーターは私、天龍丸
友貴でした。ではまた、次回をお楽しみに〜!

リポート Vol. 2
皆さん、こんにちは!天龍丸
友貴です。昨日の第8倉庫からのリポートは お楽しみいただけましたか?昨夜は結局、真夜中までお仕事だったので、 今日はちょっと寝不足で頭がボーっとしてますけど、リポート頑張りますね!
私は今、桜ヶ丘に来ています。時刻は午後の4時を少し回ったところです。 この辺りは静かな住宅街といった佇まいで、のどかな午後の風景が見受け られます。え〜と、ここは駄菓子屋さんでしょうか?お店の前で子供たちが 遊んでいますね。そして、こちらの電話ボックスの横では、ご近所の主婦の 方たちでしょうか、楽しそうにおしゃべりに花を咲かせていらっしゃいます。 実は、今からここを、我らがヒーロー・芭月涼さんがお通りになることになっ ています。先ほどからお待ちしているのですが、おそらくアチラの方から…。
あ、見えました!涼さんです。桜ヶ丘公園の角を曲がってコチラに向かって 歩いていらっしゃいます。昨日、貴章さん父子から鏡を探し出すよう言われ た涼さんですが、お父様が何かを預けていらしたようだと聞いて、今日ドブ 板の骨董屋さんにお出掛けになりました。果たして、鏡は無事、手に入った のでしょうか?さっそくお話を伺ってみましょう。
「あの〜、涼さん!」 「ん?アンタは確か昨日…」 「ええ、今日も取材させていただきます、天龍丸
友貴です」 「リポーターに話すことなんかない」 「そ、そんなことおっしゃらないでください。鏡は見つかったんですか?」 「アンタには関係ない!」 「あ、いえ、私、コレ仕事ですから…。お話いただけないと困るんです」 「じゃ、急いでるから」 「あ、涼さん、待ってください!うわっ…、……………!」
し、失礼しました!焦ったらマイク落としちゃって…。あ!涼さんが行ってし まわれる。急いで追いかけなきゃ…ん?あっ!あれはっ…?!
もしや、貴章さん?そうですよ、貴章さんです!え?いつの間に…?それに しても、どこから?ぜんぜん気付きませんでしたけど…。でも丁度いいわ! 私、お会いしたかったんですよ〜。うふふっ、今日こそインタビューを…
「まさか…あんたたちも藍帝の仲間だったのか?」 「だとしたら?」
うわっ、大変です!涼さんと貴章さんがお互いに身構えました。すごい殺気 です。ま、まさかこんな所で…。でも、お二人ともナンカ本気みたいですね。 すごい事になってきました!果たして本当に闘いが始まるのでしょうか?!
うわっ、うわ〜っ!!ホ、ホントに始まっちゃいましたよ!ど、どうしましょう…? 私、格闘技の実況ってやったことなんです。困ったわ〜。うわっ!キャ〜! スゴイ迫力!それにしても、貴章さん、カッコいいですぅ。ホントにお強いん ですね〜。あ!涼さんたら貴章さんに何を!貴章さんが倒れて…って、え? 脚を回して起き上がりましたよ、貴章さん!きゃ〜、カッコい〜っ!うわ〜! 今度はなんと、バック転をなさいました!スーツなのに、なんて身が軽いん でしょう!う〜ん、ホレボレとしてしまいますね〜。やっぱ、オトコは強いの が一番ですよね〜。うはっ、バンバン足技、決まってます。なんて長い脚… ステキだわぁ!蹴って蹴って、もっと蹴って〜!あぁ、私も蹴られた〜い!
あ、あれ?終わり?お二人の動きが止まっちゃいましたけど…。
「これ以上やっちゃ、お前のボディーガードとして失格になる」
ボ、ボディーガードって?今の、どう見たって闘ってませんでした?
「親父に頼まれたのさ」
あぁ、なるほどお父様に…。でも、ボディーガードがなんで闘うんでしょ…?
「早く鏡を見つけ出すんだ」
そう言えば、骨董屋さんに鏡はなかったんでしょうか?…ん!あれ?今何か 屋根の上に見えませんでした?跳んでっちゃいましたけど…。何だったんで しょうか?ネコにしちゃあ大きすぎるみたいでしたけど、それ以外に屋根に 登りそうな動物なんていませんよね〜。まさか、人間があんな所にいるはず ないし…。見間違いでしょうか…?まぁ、寝不足ですからねぇ、私…ん?
あれっ?貴章さんがいませんね。う〜ん、どこにいらっしゃったのでしょう?
「あの〜、涼さ〜ん!」 「ん?なんだ、まだいたのか?」 「はい。え〜と、貴章さんはどちらに…」 「アイツなら帰ったけど」 「え〜っ!お帰りになっちゃったんですかぁ?」 「俺も帰る」 「はい、お疲れ様でした〜」
なんだ〜、貴章さん帰っちゃったのかぁ。今日こそインタビュー取りたかった のにぃ!う〜ん、やっぱちゃんとアポ取らなきゃダメかしら…?じゃあ、電話 番号がいるわねぇ。あ、確か涼さんがご存知のはず…って、あ〜、涼さんも もう帰っちゃったのね。しまった、帰すんじゃなかったわ!え…なに?あっ! まだカメラ回ってたんだっけ?なんか昨日と同じことしてません?私…
失礼いたしました!え〜、今回のリポートはこれで終わりです。桜ヶ丘から 天龍丸
友貴がお送りしました。それでは、また次回をお楽しみに〜!

リポート Vol.
3
皆さん、こんにちは!天龍丸
友貴です。私は今日また、新横須賀港にある 旧倉庫街に来ています。コチラにいらっしゃる芭月涼さんが、無事鳳凰鏡を 見つけ出して、今から貴章さん父子に報告にいらっしゃるというのです。
「涼さん、鳳凰鏡発見、おめでとうございます!さっそくですが、その鏡を ちょっと見せていただけませんか」 「悪い、時間がないんだ。じゃ、中に入るから…」 「あ、涼さん、待ってください!ちょっと〜!」
あ〜ぁ、涼さん、もう第8倉庫の中に入ってしまわれました。では、私たちも 急いで後に続きましょう。個人的には、また貴章さんにお会いできると思う と、ドキドキしてしまいます。ええと、このドア、けっこう重いんですよね〜。 よいしょ…っと。あ、カメラさん、ちゃんと付いてきてくださいね。…うわ〜! 相変わらず中は薄暗いですね〜。
「これが鳳凰鏡…まさしく幻のトウ河緑石」
(小声) あ、涼さん、すでに貴章さんのお父様に鳳凰鏡を見せていらっしゃいます。 うわっ、アチラに貴章さんもいらっしゃる!相変わらず、ダブルのスーツが 決まってますね〜!ホント立ってるだけで絵になるんですよね、貴章さん。 ん?…おっと、いけない!リポートに専念しないとまた怒られちゃいますね。 え〜と、あれが鳳凰鏡ですかぁ。鏡っていうわりには、キラキラしてません ねぇ。石で出来ているそうですが、緑色の石ってけっこう珍しいですよね? へぇ〜、そもそも鏡は2枚あるんですね。龍と鳳凰がどうのとかおっしゃっ てます。なるほど〜、あれを盗まれると大変なことが起こるんですかぁ…。
「見つかったら、お前の命はないということだ」
キャ〜、貴章さんがお言葉を!なんてクールで、ステキなお声なんでしょう! 実は私、さっきから貴章さんばかり気になって…
「クケ〜エ!クケッ!」
え?ええっ!何ですか、アレ?天井から何かが降りてきました!あぁ〜っ! 鏡が奪われましたっ!そしてまたピョンピョンと荷物を伝って上のほうへ! クケ〜ッとか言ってますけど、いちおうは人間なんでしょうか…?あっ!今、 クレーンで吊るされたゴンドラに飛び乗りました。このまま逃げられてしまう のでしょうか!?これは一大事です!
「おのれ!」
あ、貴章さんが階段を駆け上がっていかれます。頑張って〜っ!
「貴章!」 「そうか!芭月、そのボタンを押せ!」
貴章さんの指示で涼さんが操作パネルに駆け寄って、何やらボタンを押し ました。あっ!ゴンドラが動いて、あの変な人間が驚いて鏡を落としました! 涼さん、素早くそれを拾い上げましたが、鏡は大丈夫だったのでしょうか? あっと!例の変な人間が、捨てゼリフを残して窓の外へ逃げていきました。 どうやら鏡は無事だったようです。あ〜、よかった〜!ふぅ…
「マッドエンジェルスの手先でしょうか」
え?マッド…何ですって、貴章さん?あ、エンジェルスですか…。
「俺たちと対立関係にある組織だ。薄汚い連中さ」
貴章さんたちと対立?しかも薄汚いなんて!許せませんねぇ、そいつら!
「蚩尤門とマッドエンジェルスは…つながっている」
何やら複雑な事情がありそうですね〜。なんか裏社会のダークな匂いが します。え?藍帝…って、確か涼さんのお父様の仇でしたよね?その辺が みんなつながってるワケですか…。貴章さん、そういう悪者たちと闘ってい らっしゃるんですね〜。なんとカッコいい!でも、危険ですよね、そういうの って、きっと!ああ、でもそういう危険なカオリがするのもいいですね〜! いかにもオトコ!って感じで…。オンナは危険なオトコに弱いんですよぉ。
「行かせてください、香港へ」
お!涼さん、藍帝を追って香港においでになりたいようです。
「やめろ、お前では藍帝には勝てない」
そうですよ〜!涼さん、目の前でお父様を殺されてるんですよね?その時 何一つ出来なかったのに、勝てるわけないじゃないですかぁ。
「ふっ…ご立派なことだな。だが、お前に勝ち目はないぞ」
そうそう、そのとおり!やはり貴章さんのおっしゃることは正しいわぁ。
「もし目の前でこの人が殺されても、黙っているのか!?」
うっ、涼さんたら、何ということを!貴章さんのお父様を指差して「この人」 呼ばわりはないでしょう!失礼ですよ!貴章さんだって、ムッとなさってる じゃないですか。ほ〜ら、怒らせちゃった!お二人とも背を向けてお帰りに …って、や〜ん!貴章さん、帰らないで〜っ!今日こそはぜひインタビュー をお願いしたいんですから!あ〜っ、階段を上ってお二階へ…
「あ、あの、貴章さ〜ん!」 「ん…?」
ドキッ!貴章さんがこっちをご覧になったわ!なんてキリっとした眼差し…。 心の奥まで見透かされそう。あ、どうしよう…そんなに見つめられたら私…
「え〜と、あの〜、その〜」 「何だ」 「あ、あの……」
あ、どうしよう?ドキドキして言葉が出てこないわ。あっ!貴章さんが行って しまわれる…何か言わなきゃ!あ〜、でもダメ…!き、貴章さん、待って! 行かないで〜!…って、もうお姿が見えないわ!あぁ、貴章さん…
………好きです………
あ…、スミマセン!私、今日はもうリポートできそうもありません。ちょっと 動悸が激しくて…。なんか頭もぼ〜っとしてます。ふ〜っ、あの貴章さんの 目に見つめられた途端に、もう頭の中が真っ白になっちゃって…。今日は もうウチに帰って休むことにします。旧倉庫街の第8倉庫から天龍丸
友貴 がお送りしました。ではまた明日!えっ、明日じゃないんですか?…まぁ、 どうだっていいじゃないですか、そんなこと…。ふぅ…。

リポート Vol.
4
え〜、皆さん、こんにちは!…あ、天龍丸友貴です。え〜と、私は今ぁ…、 あ〜、新横須賀港の…。ふぅ〜、どうも調子がでません、私。スミマセン! この頃、ちょっと気になる人…いえ、事があって、よく眠れないんですよね。 でも、お仕事ですから頑張らないといけませんね。…よぉ〜し、ファイトぉ! え〜実は、涼さんが香港までの旅費を稼ぐために、港でお仕事を探すこと になって、今日は同行取材をさせていただいています。涼さん、先ほどから 警備員さんや作業員さんたちに、次々と声を掛けていらっしゃるのですが、 なかなかお仕事は見つからないようです。
「港でアルバイトできる所を知りませんか?」 「バイトを探してるんですが、誰に聞いたらいいですか?」
あれ?涼さんったら、いつの間にか電話ボックスの前にいらっしゃいます。 あ、中にお入りになりました!そして今、どこかにお電話しています。ああ、 きっと面接のアポを取っていらっしゃるんですね。いい所が見つかったんで しょうか?…それにしても、この港には貴章さんのいらっしゃる旧倉庫街も あるんですよねぇ。あ〜貴章さん、今日も第8倉庫でお仕事でしょうか…? 一目お会いしたいわぁ。…ん?あ、いけない!リポートに集中しなくっちゃ! あ、涼さん、電話が終わったようです。
「涼さん、お仕事は見つかったんですか?」 「アンタには関係ない」 「ま、また、そんなことを…。少しは取材に協力してくださいよぉ」
わっ!涼さん、いつものように走りだしました。とにかく、私たちも後を追い かけないと…。カメラさん、大丈夫?走れる?…って、なんで私たちまで 走らなくちゃいけないのかしら?わっせ!わっせ!っと。あ〜息が切れる。 あ!涼さんったら、あそこでホームレス風のおっちゃんと話を始めました。 よかったぁ!やっと、休める。ふぅ〜!…ああ、そう言えば、旧倉庫街って この近くですよね〜。どうしていらっしゃるかしら、貴章さん…
「ホームレスになりたかったらわしに聞け!」
…あっ!貴章さん…じゃなかった、涼さん、お話が終わられたみたいです。 また走り出しました。海に出た所で、角を左に曲がって…って、旧倉庫街の 方向じゃないですか、コレ!あ〜こっちに来るのが分かってたら、貴章さん にインタビューを申し込んでおいたのに…。きっと、お仕事でお忙しいんで しょうね、貴章さん。後で忘れずに、涼さんに電話番号、聞いとかなくちゃ。 はあ、はあ…もう走るの疲れちゃいましたよ…って、ちょっとちょっとぉ〜! ここって旧倉庫街じゃないですかぁ!え?もしかして貴章さんに会いに…? あっ!涼さんが正門の中に入っていかれます。私たちも急いで…
「スミマセ〜ン!芭月涼さんに同行してる取材の者で〜す」
ちょっと強引だったかな…?警備員さん、なんか怪訝そうな顔してたもの…。 ま、でも入っちゃえばこっちのものよね!涼さんったら、貴章さんに会いに くるのなら、そう言ってくださればいいのにぃ…。あっ!でも、どうしよう…? 貴章さんにお会いするのに、私ったら心の準備ができてないわ。だいたい いきなりインタビューをお願いするのも、失礼よね?それに、何を伺ったら いいのか考えてこなかったし…。とか言ってるうちに、第8倉庫に到着です。 え〜今、涼さんがドアを開けて中にお入りになりました。では、私たちも…。
あっ、待って!ヤダ私、今日こんなカッコしてたんだわ!このスーツ、妙に オバンくさくないですか?いえ、今朝迷ったんですよ〜!ピンク色のミニの ワンピースにしようかどうしようかって…。でも、今日ちょっと寒そうだから、 こっちにしちゃったんですよねぇ。うぅ、貴章さんにオバサンだと思われたら どうしよう!でも、着替えなんて持ってきてないし…。え?早く中に入れ…? あ、そうですよね。んも〜、仕方ないかぁ!倉庫の中、暗いから、きっとよく 見えないですよね。…ってことで、勇気を出して中に入ります。よいしょ!
「……、その勢いたるや、猛虎をも推して、倒す」
(小声) あ、貴章さんの声です!涼さんの前で何かを読んでいらっしゃるようです。 倉庫の中に響き渡るこのクールな声、なんてステキなんでしょう!
「今、聞いたことを心にとどめて練習すれば、身につけることができるかも しれん」
あ、涼さんに読んでいた物を渡しました。あぁ、貴章さんのスーツ姿、いつ 見ても凛々しいわぁ!ずっと眺めていたい気分です。う〜ん、うっとり…
「俺は仕事が残っている」 「ありがとう。邪魔したな」
えっ!涼さん、もう帰っちゃうんですか?今来たばっかりじゃないですかぁ! それに、お仕事は紹介してもらったんですか?そのために来たんじゃあ…。 あ!どうしよう、涼さんが出ていってしまわれる。でも私、まだ貴章さんと…。 待って、涼さん!一緒に貴章さんとお話を…。私一人じゃ、緊張しちゃって お話できそうもないもの。あっ、貴章さんもお戻りになってしまう!そんなぁ、 行かないで、貴章さ〜ん!ど、どうしたらいいの、私…?ドキドキしちゃって 何も考えられない…あ〜もう、どうしよう!でも、このままじゃ、この前と同じ だわ。思い切ってお話しなくっちゃ!だって私、…好きなんですもの…
「き、貴章さん!」 「…ん?何だ」
ドキッ!またこの眼差し!負けちゃいそう…。
「あ、あの…」
うわ〜、クラクラする!…ダ、ダメよ、友貴!負けないで!
「き、貴章さん。じ、実は、す、す…」 「……?」
さあ、言うのよ、友貴!今がチャンスよ!行けっ!行くのよ!
「…す、す…」 「何を言ってるんだ、お前」 「…す、素敵な倉庫ですね!」 「用がないなら、行くぞ」 「あ、待ってください!実は…インタビューさせていただきたいんです」 「インタビュー?…ふん、考えておく。また後で連絡してこい」 「あ…は、はい!それと…あ!待って、貴章さん!」
あ……あっと言う間にお二階へ。貴章さん…もっとお話したかったのに…。 私のこの気持ち、ひと言伝えたかったのに…。ふぅ〜、まだドキドキしてる。 でも私、今、貴章さんとお話しましたよね?いったい何を話したんでしょう? 何にも覚えてないんですけど…。だって貴章さんったら、またあんな眼差しで 見つめるんですもの、もう、頭に血が昇っちゃって…。え?インタビューした んですか、私?あ、申し込んだだけ…?そりゃ、そうですよね〜。また後で 連絡するわけですね。あ、でも電話番号が…。まぁ、涼さんに聞けば分かる から、いいか…。そう言えば今日、涼さん、居ませんでしたっけ?え?もう お帰りになった?…ああ、そうでしたね。確か今日は、涼さんの取材だった んですよね。でも、お帰りになったんじゃ仕方ありませんね。
じゃあ、私たちも、そろそろ失礼することにしましょう。旧倉庫街の第8倉庫 から、天龍丸
友貴がお送りしました。それでは、また次回をお楽しみに〜!

リポート Vol.
5
皆さん、こんにちは!天龍丸 友貴です。え〜、今日も私は、新横須賀港に 来ています。涼さんが、港でアルバイトをお始めになったというので、さっそく リポートにやってきたのですが、涼さん、フォークリフトを操作して荷物を運ぶ お仕事をなさっています。今日は朝から、ここ旧倉庫街の正門前に積まれた 木箱を少し離れた18番倉庫に運んでいらっしゃるのですが、さすがは涼さん ですね、昨日初めて、フォークリフトの操作を教わったばかりだというのに、 今日はもう、自由自在に操作していらっしゃいます。え〜今また、1つの木箱 の下にフォークを差し込みました!そして、ウィーンという音と共にその木箱を 持ち上げて、そのままバック。なかなかカッコいいですね〜!さあ、いよいよ 前進です。港の中を移動するのもスムーズで、まったく問題がありません。
「おっと!」
え!なぜかストップしてしまわれました…ああ、ネコがいたんですね?涼さん ネコが通る間、そのままで待っていらっしゃいます。さすが、ネコには優しい 涼さんですね〜!はい、再び動き出しました。今度こそまっすぐ前進して… そうそう、あそこの角を右に曲がって…ああ、見えなくなってしまいましたね。 あの角の20〜30メートルほど先に、目的の18番倉庫があるんです。そこに 木箱を下ろして、またこちらに戻っていらっしゃいます。あ、今サイレンが鳴り ました。ちょうど5時になったようです。涼さんのお仕事もこれで終わりですね。 涼さんは日給制だと伺っていますので、お戻りになったら、一緒に事務所に 行って、お給料を頂く様子をリポートさせていただこうと思います。
ところで、あちらに見える旧倉庫街の中には貴章さんがいらっしゃるはずです が、お仕事まだ続けていらっしゃるのでしょうか?貴章さん、いつもお忙しそう ですものねぇ。実はこの前、インタビューのアポを取ろうと、涼さんから伺った 番号に電話したんです。そしたら、出た方がいきなり「父」がどうの…とかおっ しゃるんですよ。「父イマセン」って言ったのかも…?もし、そうだとしたら貴章 さんのご兄弟ってことになりますけど、どうなんでしょうか…?で、とにかく私は 「そちらに貴章さんはいらっしゃいませんか」って尋ねたんですよね。そしたら、 相手が「お前、誰だ」と聞いてきたので、「WOAIテレビですが、インタビューの お願いを…」と答えたんですけど、もう途中で、ガチャン!ですよ〜!まったく どうなってるんでしょ!もしかして、涼さんの教えてくださった番号が間違って いたんでしょうか?もし、デタラメな番号だったりしたら、怒りますからね、私! …って、涼さんそろそろ、お戻りになってもいい頃なんですけど…。
それにしても、夕方の港っていいですね〜。空が少しずつ夕焼けに染まって きて、とってもキレイです。貴章さんも、毎日この風景を見ていらっしゃるんで すよね〜。あ、でもお仕事が忙しすぎて、外に出る暇もないんでしょうか…? …ん?アレは!…貴章さん?まさかねぇ…。あんまり貴章さんのことばっかり 考えてるから、誰でも貴章さんに見えてしまうのかしら…それとも、マボロシ? いいえ!あのカッコいいスーツ姿は、やっぱり貴章さんだわ!間違いないっ! なんと、貴章さんが正門から出ていらっしゃいました!今、警備員さんに片手を 上げて軽く挨拶を…。う〜ん、なんてスマートな身のこなし。ダンディーだわぁ! それにしても、まさか、こんな素晴らしい偶然があるなんて…。
あ!もしかして貴章さん、私に会いに…?涼さんが連絡してくださったとか…? きゃ〜、どうしましょ!私、また心の準備ができてないわ。でも、今日はヘンな カッコじゃなくてよかったぁ!この前失敗しちゃったから、港に来る時はいつも 服装に気を付けることにしたんですよ〜。今日はちゃんと、ミニのワンピース ですからね〜。どうです、私?イケてませんか?これなら、貴章さんにも気に 入っていただけるかしら。私の気持ちをお伝えするなら、今日がチャンスかも …って、アレ?貴章さん、どこへいらっしゃるんですか?私は、ここですよ〜! あ〜、あっと言う間に角を曲がって後姿に…。どうやら私に気付いていただけ なかったみたいですね。急いで追いかけなくっちゃ…。
「あの〜、貴章さ〜ん!」 「…悪いが、お前の相手をしている暇はない」
え?そ、そんなぁ!私に会いにきてくださったんじゃ…?あ、どんどん行って しまわれる。まぁ、アポ取ったわけじゃないから仕方ないですけど、がっかり! それにしても、貴章さん、どこへいらっしゃるんでしょう?気になりますねぇ…。 追跡してみましょうか!あ、いえ、決してストーカー行為なんかじゃありません よ〜!あくまでも取材ですからね、取材!カメラさん、大丈夫?ちゃんと付いて 来てね!え〜、貴章さんは、休憩所横の角も曲がらず、海沿いのクランク状の 道を、足早に歩いていかれます。颯爽としたお姿、ホレボレしちゃいますね〜。 辺りはちょうど見事な夕焼けに包まれ、ロマンチックなムードが漂っています。 ホントは私も、貴章さんに寄り添って夕焼けの中の散歩を楽しみたいわぁ〜! …てゆーか、もうちょっとゆっくり歩いてくださらないかしら…きゃっ!貴章さん が振り返った!ドキッ、目が合っちゃったわ!また、あの刺すような眼差し…。 ど、どうしよう、怒られちゃう…
「す、すみません!…あ、あの、別に私、ストーカーじゃあ…」
あ…貴章さん、何もおっしゃらずに、すぐにまた前を向いて歩き出されました。 あ〜、ビックリしたぁ!でも、何もおっしゃらないってことは、ストーカー…じゃ なくて…取材してても構わないってことですよね?沈黙の了解…えっ、暗黙? …そんなの、どっちでもいいんですけど、貴章さん、相変わらず歩くのが早い わぁ。もうあんな所に…ん?アレってもしや、涼さん…?そうです、涼さんです よ〜!なぁんだ、涼さんったら、お一人で事務所に戻ってらしたんですねぇ? えっ!貴章さんが涼さんの後ろに忍び寄って…うわっ!いきなりキックです! 危ない、涼さん!あ、でも、涼さんには当たりませんでした。そりゃ、そうです よね〜?貴章さんが本気で涼さんを襲うわけないですもの…あはは〜!
「技を教えてやろうってことさ」 「技を?大きなお世話だ」
ま〜、貴章さん、涼さんに技を教えにいらしたんですね〜!なんてお優し〜! …なのに涼さんったら、貴章さんのせっかくのご好意を断るなんて、失礼じゃ ないですかぁ!第一、それが年上の人間に対する口の聞き方ですか?
「どうしてもと言うなら、教わってやってもいいぜ」 「素直じゃないな…まあいい」
あぁ、貴章さんは、やっぱオトナですね〜!涼さんの無礼をあっさりと許して、 技を教えてあげるようです。さっそく型を見せてます。いや〜ん、カッコい〜! 涼さんも諦めたのか、おとなしく教えてもらっています。でもさすが、貴章さん、 キビキビとした指導っぷり、決まってますね。私も教えていただけないかしら…
「誰が投げろと言った?もう体捌きを忘れたのか?」 「避けてどうする?蹴ることだけを考えろ!」
あ〜、私も厳しく指導していただきたいわぁ。貴章さん、叱って、叱って〜っ!
「覚えたのは型だけだということを忘れるな」
あ、涼さん、もう覚えてしまわれたみたいです。さすが、貴章さんのご指導が よかったんですね〜!じゃあ、次は私…アレ?お二人、移動なさってますね。
「なぜ、俺に技を?」
涼さん、聞かなくたって、貴章さんのご好意だってことくらい…
「お前…どうしても香港に行く気か?」 「ああ…」 「死にに行くと分かっていてもか」 「それでも行く」
ええっ!涼さん、死ぬのが分かってて行くんですか?そんなのバカですよぉ!
「俺がお前だったら…同じことをする。それが答えだ」
え?貴章さん、死ぬのが分かっててもいらっしゃるんですね?うぅ…か、かっこ い〜!…あぁ、感動です!思わず涙が溢れてきちゃいました。それほどまで 強い信念をお持ちだなんて、貴章さんって、なんて男らしいんでしょ!はぁ〜。 それに、「それが答えだ!」…な〜んて、決まってましたね〜。こんなセリフが 決められるの、貴章さんくらいですよ、きっと!もし、これが他の人だったら、 「何この人、キザなこと言ってんの〜?」って感じかも。でも、死ににいらっしゃ るだなんて、まさか実際に、そんなことなさらないですよね?貴章さんがいない 世界なんて、考えただけでも私…って、アレ?貴章さんがいな〜い!え〜っ、 いつの間に…?いや〜ん、またちゃんとお話できなかったわぁ!これはもう、 絶対アポ取って、インタビューさせていただかなくっちゃ!そうそう、電話番号 が合ってるかどうか涼さんに確かめないと…って、涼さんもいな〜い!も〜!
…ということなので、今回のリポートはこれでおしまいです。新横須賀港から 天龍丸
友貴がお送りしました。それではまた、次回をお楽しみに〜!

リポート Vol.
6
皆さん、こんにちは!天龍丸 友貴です。え〜、私は今、とってもドキドキして います。実は、新横須賀港でアルバイトをしている涼さんが、貴章さんに会う ために、これから旧倉庫街にいらっしゃるというので、同行させていただくとこ ろなんです。ご存知のように、涼さんはお父様の仇を探していらっしゃいます が、その仇と何らかのつながりがあると思われるマッドエンジェルスに関して、 貴章さんから情報をいただこうというのです。え〜今、お仕事を終えた涼さん が、いつものように電話で貴章さんにアポを入れていらっしゃいます。
そうそう、この前、私が貴章さんに電話を掛けた時、途中で切られてしまった ので、さっき涼さんに番号を確認したんです。そしたら、番号は合ってたんで すけど、どうやら合言葉が必要だったようなんです。もう、涼さんったら、それ ならそうと、最初から言ってくださらなくちゃ〜!私が掛けた時、相手の方は たぶん、「父なる天」とおっしゃったんだと思います。私、合言葉のことなんて 聞いてないから、「父いません」って言ったのかも?…とか思っちゃいました。 あはは!それじゃ繋いでもらえるわけないですよね〜。でも、合言葉を知らな いとお話できないなんて、なんかちょっと秘密めいてて、ステキですよね〜! 実は貴章さんって、世界をまたにかけて暗躍するスパイだったりして!うふっ、 不可能なミッションにも果敢に挑戦!な〜んて。キャー、カッコい〜っ!
…って、あれ?涼さん、もうあんな所を走っていらっしゃるわぁ!いつの間に お電話終わったんでしょう。急いで追いかけなくっちゃ。待ってぇ、涼さ〜ん! まったく涼さんったら、走ってばっかりなんだから…。はぁはぁ…。なんで毎回 私たちまで走らなくちゃいけないのぉ?今度から自転車、持ってこようかしら。 はぁはぁ…あ〜、角を曲がって見えなくなっちゃった。でも、もうダメ…これ以上 走れないわ。そりゃ、行き先は分かってるけど、あそこの警備員さん厳しいから 一緒じゃないと入れてくれないかもぉ。もう何回も行ってるんだから、いい加減 顔パスにしてくれてもよさそうなのに。ふぅ…置いてかれちゃった。どうしよう! …って、あれ?涼さん、あんな所で、ホットドッグ売りの外人さんとお話してる。 そう言えばあの人、涼さんのお友だちだったような気が…。よかった〜、これ で追いつけるぅ、超ラッキ〜♪
「マッドエンジェルスはベリーデンジャラスよ。気をつけるネ!」 「分かった、トム」
この人、話す時も踊りながらだなんて、アブナイ奴!ベリーデンジャラスね〜。 あ!お話終わって、涼さん、また走り出しました。でも、ここまで来ればもうすぐ だから大丈夫!…って、わぁ、涼さん、もう正門まで!ちょ、ちょっと待って〜!
「あ、どうも〜!いつもお世話になってま〜す、うふっ!」
えへ、ちょっとウィンクしただけなのに、あの警備員さんの戸惑った顔ったら! 私、もう何度も来てるんですから、常連さんのリストに入れといてくださいね〜。 さてと…第8倉庫はこっち…っと。あぁ、間もなく貴章さんに会えるんですねぇ。 またドキドキしてきちゃいました。あ!走ってきたから、お化粧くずれちゃった かしら?ヘア、乱れてません?鏡、鏡…って、あ〜ん、涼さんったら、もう中に お入りになっちゃいました。んも〜、仕方ないか…カメラさん、行くわよ〜!
(小声) あれ〜?涼さん、どこにいらっしゃるのかしら?相変わらず、薄暗くてよく見え ないんですけど…。
「もう、やめておけ!これ以上、あいつらを刺激するのは危険だ」
あ、貴章さんのお声!二階からだわ!
「奴らは、お前が思っている以上に大きな組織だ。ヘタに関われば、本当に 命を落とすことになるぞ」
どうやら、この階段の上にいらっしゃるようです。そっと上ってみましょう。
「まあいい…俺は忠告したからな」
あ、いるいる!貴章さん、腕組みをして、壁に寄りかかっていらっしゃいます。 うわ〜、いつにもまして決まってますね、あのポーズ!う〜ん、ステキ〜っ!
「芭月、おとなしく帰れ!」
え!涼さん、なんか貴章さんのお気に触るようなことでも、したんでしょうか? 確かに、あんなふうにマジマジと見られたら、うっとうしいでしょうけど…。でも、 いいな〜、私もあんな近くから、貴章さんをずっと眺めていたいわぁ…。
「貴章…」 「お前のために言ってやってるんだ」
まあ、貴章さん、涼さんのことを心配してくださってるんですね。なんとお優しい んでしょう!それにしても涼さんったら、1回りも年上の貴章さんを呼び捨てに するなんて、失礼じゃないですかぁ!それに、ちょっと近付きすぎですよ〜!
「貴章…」 「芭月、これ以上あいつらに関わるな」
だからぁ、呼び捨ては失礼ですってば〜!…それはともかく、「あいつら」って マッドエンジェルスのことですよね?やはり、危険な連中なんですね。涼さん、 貴章さんのおっしゃるとおり、もう関わらないほうがいいですよ!貴章さんの おっしゃることに間違いは…って、あれ?涼さんが戻っていらっしゃいます。
「涼さん、どうなさったんですか?」 「帰るんだ」 「え?今、来たばっかりじゃないですか!マッドエンジェルスのことは…?」 「これ以上話してもムダみたいだから」 「そんなぁ…せっかく貴章さんにお会いできたというのに〜!もっとお話を聞か せていただきたいわぁ」 「なら、アンタが話せばいい」 「え、私…?私が貴章さんと…?いいんですか、お話しても…?」 「いいんじゃないか?じゃ、俺は帰る」
あ、涼さんったら、あっという間に階段を下りていってしまわれました。ど、どう しましょう、私…。このまま帰るのは残念だけど、かといって…あ!貴章さんも お戻りになっちゃう。せっかくお話できるチャンスだもの、引き止めなくっちゃ…
「ま、待って、貴章さん!」 「またお前か…」
わっ、またこの眼差し!ドキドキしちゃって、心臓が飛び出しちゃいそ〜!何を 話したらいいの?こんなことなら、インタビューの準備してくればよかったわぁ。 …あ、そうよ!マッドエンジェルスについて聞けばいいんじゃない?
「あの〜、マ…マ…」 「……」
ど、どうしよう、言葉が出てこない…
「え〜と、マ、マ…」 「ふん、ママに会いたいのなら、家に帰ったらどうだ」
いや〜ん、そうじゃないんです!でも、口が思うように動かない…
「あ、いえ、そうじゃなくて…マッド…」
あれ?マッド…何だっけ?う〜ん、思い出せない!マッド、マッド…??
「マッド…マックスについて教えてください」 「俺はそんな映画は見ていない」
うわ〜ん!違うんですってば!え〜と、え〜と…そうだ!
「マッドエンジェルスについて教えてください!」 「ふん、お前には関係ないことだ。それに…お前に付き合っている暇はない」 「そ、そんな…ちょっとだけでも…あ、待ってぇ、貴章さ〜ん!」
あ〜、行ってしまわれた。ふぅ…ダメだわ、私。あの眼差しで見つめられると、 頭の中が真っ白になっちゃって…。あ〜自己嫌悪ぉ!でも、だいたい涼さんが 急にお帰りになってしまうからいけないのよね。心の準備ができてないのに、 いきなりインタビューなんてムリなのよ!でも、ちゃんと原稿さえ作っておけば、 大丈夫なんだから…。今度お会いする時は、絶対インタビューを成功させられ るよう、しっかり準備しとかなくっちゃ!そして、できれば私のこの気持ちも…。 よ〜し、頑張るぞ〜!
というわけで、今回のリポートは、これで終わりです。新横須賀港の旧倉庫街 から、天龍丸
友貴がお送りしました。それではまた、次回をお楽しみに〜!

リポート Vol.
7
皆さん、こんばんは!天龍丸
友貴です。え〜私は、今日もまた、新横須賀港 に来ています。実は、皆さんに素晴らしいニュースがあるんです。私はなんと、 貴章さんにインタビューを申し込むことに成功しました〜!3日前、電話でアポ 取った時は、すごくドキドキして、もう少しで合言葉を間違えるとこでしたけど、 なんとか貴章さんにつないでいただけたんです。で、私ったら、すっかり舞い上 がっちゃって、何て言ったのかよく覚えてないんですけど、貴章さん、あっさり インタビューをOKしてくださったんですよ!「3日後でどうだ?」と言ってから、
「仕事は10時に終わる。ホクホク弁当の前で待っていろ」
なんて、あのクールなお声で言ってくださったんです!も〜、幸せです、私〜! というわけで、私は今、ホクホク弁当の前で、貴章さんをお待ちしているんです けど、貴章さん、毎日のようにホクホク弁当を食べてらっしゃるようですから、 よっぽどお気に入りなんですね〜。「おふくろの味」だからでしょうか?そう言え ば、貴章さんのお母様って、どんな方なんでしょうねぇ。貴章さんって、お父様 には似ていらっしゃらないから、お母様似なんですよね?うわさでは、お父様と 二人暮しのようですけど、お母様は、さぞやステキな方だったんでしょうね〜! きっと、いつもお母様のことを思いながら、ホクホク弁当を食べていらっしゃる に違いありません。あぁ、お気の毒な貴章さん!いつか私が、「おふくろの味」 を超えるおいしい手料理を作って慰めてさしあげたいわ…って、そのためには お料理習っとかなくちゃ…え!話が横道に逸れてる?あ、失礼しました〜!
え〜と今、時刻は10時3分前ですから、あと少しで、貴章さんがこちらにおいで になるんじゃないかと思います。あ〜、ついにこの時がやってきました!憧れ の貴章さんに単独インタビューできるなんて夢のようです。今まで、お会いする 度に、いつも頭の中が真っ白になっちゃって、何も言えなくなってたので、この 3日間は、インタビューの原稿を作って、何度も何度もリハしてきたんですよ。 だから、今日は大丈夫!絶対、インタビューを成功させてみせますからね〜! そして、その後は…思い切って、私の貴章さんへの気持ちを…
え?あれってもしや…涼さん?そうです、涼さんですよ!今頃どうしてこんな所 に…。まさか、いつも私に取材されてるから、今日は逆取材?…んなわけない ですよねぇ。あ、あれは!あのアブナイ雰囲気からして、マッドエンジェルスの メンバーじゃないでしょうか。なんで涼さんが、マッドエンジェルスなんかと…? まさか入団する気じゃ…あ、歩き出しました!アルファ貿易のほうに向かって います。何が始まるんでしょう…って、今日はそれどころじゃないんだわ、私。 今から大事な貴章さんのインタビューがあるんですもの…あ、貴章さんだわ! うわっ、またドキドキしてきちゃった…。落ち着くのよ、友貴。さあ、頑張って!
「…き、貴章…さん」
いや〜ん、大きな声が出ないわ。気づいてもらえなかったみたい…って、あ! 涼さんが、貴章さんに近付いてく。違うのよ、涼さん!貴章さんは私に…
「なんだ…? 芭月?」 「貴章…俺と戦ってもらおう」 「なんだと? 何を言ってるんだ、お前…」
そうですよぉ!涼さんったら、いきなり何を言いだすんですかぁ!今から私が 貴章さんにインタビューするんですから…
「いくぞ!」 「なにっ!?」
う、うわっ!お二人とも身構えてしまいました!いや〜ん、またバトルが始まり そうだわ。なんでこんなことに…。ど、どうしよう…?わ〜ん!始まっちゃった! ナンか、すごい迫力〜!あぁ、でも戦う貴章さん、何度見てもカッコいいわぁ。 そうそう、その蹴りが最高なのよね〜。キャ〜!バシバシ決まってるぅ!あっ、 今度はバック転からバック宙!なんて身が軽いんでしょ!もう、うっとり〜っ!
「貴章、わざと負けろ」 「なんだと!?」
え!貴章さんに負けろですって!それも、わざと?
「あんたを倒せば藍帝に会える!」 「テリーみたいなチンピラを信じてるのか?」
まぁ、涼さんったら、藍帝に会いたくて貴章さんに挑戦したんですか?ダメです よ、テリーなんて信じちゃ…。貴章さんのおっしゃるとおりだわ…って、涼さん! 投げ技はナシですよぉ。貴章さんが地面に…あ、脚を回して起き上がったわ。 いや〜ん、カッコい〜!コレですよ、コレ!ぜひ、もう1度見たいわぁ。涼さん、 また貴章さんを倒して〜!…え?あ…アオっちゃいけませんよねぇ。エヘッ! それにしても、このお二人、ちょうど互角…ってゆ〜か、とってもいい勝負です よね!きっと、貴章さんが手加減してあげてるんでしょうねぇ。涼さんがムチャ な挑戦をしてきたのに、ちゃんと胸を貸してあげるなんて、さすが、貴章さんは 大人だわ。稽古をつけてあげてるって感じなのかも…。とにかく、涼さん、もう 諦めて、貴章さんにゴメンなさいしちゃったほうが…
「そんな蹴りで俺を倒せるか!」 「貴様こそ、それで蹴りのつもりか!」
ああ…ダメだわ。お二人ともますますヒートアップしちゃって…マジになってる。 でも、こういうのって、ナンかステキかも〜。男同士、拳で語り合うってゆ〜か。 いいなぁ!私も男だったら、ああやって貴章さんと友情を確かめ合えるのに…
「本気ってわけか」 「貴様こそ」 「勝負だ!」 「望むところだ!」
う〜ん、シビレます〜!お互い力を出しきってのガチンコ勝負。でも、大丈夫 でしょうか…?お二人とも、だいぶお疲れが見えてきたようですけど…
「…いくぞ、芭月」 「ああ、来い」
うわっ、涼さんったら、貴章さんの顔面に2発もキックを浴びせるなんて、ヒドイ じゃないですかぁ!とうとう、同士討ちで、お二人とも倒れこんでしまいました! でも、倒れた貴章さん、身をよじってるお姿がナンかセクシーなんですけど…。 あ〜私も、ドサクサに紛れて、お二人の間に寝転んじゃおうかしら…?3人で 仲良く“川の字”…なんちゃって、うふっ!
「少しは…やるじゃないか…」 「ふん…貴様こそ…」 「おめでたい奴らだ。永遠におねんねしな!」 「貴章!」
きゃあぁぁ!テリーったら、なんてことを!もう少しで貴章さんがスプラッタ〜! まったく冗談キツイんだから!でも、よかった、貴章さんがご無事で!ふぅ…
「こんなことだろうと思った」 「汚いぞ、テリー」 「貴様を絶対に許さん」 「フッ、そんなに俺が好きなら、地獄に招待してやるぜ」 「待て!」
あ、テリーを追って、貴章さんたちも移動なさってます。私たちも、追いかけま しょう。レッツ・ゴ〜!そうですよ、テリーなんか許しといちゃいけませんって! おや〜、ナンかあちこちからガラの悪いお兄さんたちが集まってきましたねぇ。 貴章さんたち、囲まれちゃいましたよぉ。コレって、もしかしてワナ…?なんて 卑怯なの、テリーって!ホントに貴章さんたちを地獄に招待するつもり…!?
「お前と関わるとろくなことがない」 「文句なら、あとで聞くぜ」 「そうだな。やられるなよ」 「そっちこそ」
きゃぁ〜、お二人が背中合わせで戦闘ポーズを取りました。カッコいいですぅ! これぞ男!って感じで、惚れ惚れしちゃいますねぇ。も〜、ウットリ〜!それに 今の貴章さんのセリフ、カッコよかったですね〜!涼さんったら、いっつも貴章 さんに迷惑ばかり掛けてますものねぇ。でも、「ろくなことがない」と言いながら、 貴章さんが嬉しそうに見えるのは気のせいでしょうか?「やられるなよ」という セリフに、涼さんに対する貴章さんの思いやりを感じてしまうのは、私だけじゃ ないですよね?ああ、男の友情ってなんて美しいの〜っ!羨ましいわぁ〜!
でも、いくら相手がチンピラとは言え、貴章さんたちは、さっきのバトルで相当 お疲れのはず。一度にこんな大勢の相手をして、大丈夫でしょうか?それに、 テリーのことだから、またどんな卑怯な手を使ってくるか分からないですよね。 心配だわぁ!いったいこれから、貴章さんたち、どうなっちゃうの〜〜っ? (小声)え!なぁに?CM入れるんですか?分かりました〜。
あ、失礼しました!え〜、では皆さん、ここでコマーシャルをご覧ください!
*プロデューサーよりお知らせ:
番組の途中ですが、放送時間の関係上、この続きは、次回、録画中継で お届けいたします。どうぞ、次回をお楽しみに〜!

リポート Vol. 8
*プロデューサーよりお知らせ: 今回は、前回のリポートの続きを、録画中継でお届けいたします。
はい、コマーシャルが明けて再び現場です。新横須賀港から、天龍丸
友貴が お伝えしています。貴章さんと涼さんが、大勢のマッドエンジェルスに囲まれ、 今まさに一戦交えようとしています。いったいこれから、どうなるのでしょう!?
あ、ついに始まりました!マッドエンジェルスのメンバーが次々とお二人に襲い 掛かっていきます。でも、いかにお疲れとは言え、さすが、貴章さんの動きは キレがいいですね〜!楽々とチンピラたちを倒していかれます。わっ!1発の キックで2人が吹っ飛んじゃいました〜!キャ〜、カッコい〜っ!
「やるじゃないか」
涼さん、何を感心してるんですか!そんなの、当たり前じゃないですか!貴章 さんに失礼ですよ!そんなことより、貴章さんにばっかり任せてないで、少しは 涼さんも闘ってくれなくっちゃ…。ほら、貴章さん、肩で息なさってますよ〜!
「もうバテたのか?」 「なんだと!」
ま〜、涼さんったら、なんてことを!貴章さんは涼さんの分まで頑張っていらっ しゃるんじゃないですか。涼さんもちゃんと闘ってくださいよ〜!
「油断するな!」
ほ〜ら、貴章さんに怒られた。そうそう、その迷彩服のお兄さん、けっこう強そ うですよ。あ、涼さん、いくらなんでも、そんなメチャクチャな蹴りじゃあ…
「フン。力まかせだな」
ほ〜ら、また貴章さんに怒られた。それにしても、マッドエンジェルスたち、次々 と現れますね〜。いったいどこにこんなに隠れてたんでしょうか!あ、涼さんが 走って路地を通り抜けようとしています。そう、ここじゃ狭いですものね〜。
「うざってえな」
涼さんったら、文句を言いながらも、一応は敵を蹴散らしてますね。あ、やっと 広い場所に出ましたよ。ここなら、思う存分、暴れられますね!えっ?あの人、 ドラム缶を抱え上げましたよ。まさか、涼さんに向かって…あ、危ないっ!
「気をつけろ!」
ふ〜、間一髪だわ!貴章さんが注意してくださらなかったから、涼さん、ドラム 缶の下敷きになってましたよ。さすが、貴章さんだわぁ。闘いながらも、しっかり 涼さんを見守ってくださってるのね。ん?今度は角材でしょうか、棒を持った男 が涼さんに襲い掛かってきました。あ〜、涼さん、ピンチ!避けながら後ずさり なさってますけど、もう逃げ場が…あ、走ってその場を逃れました。でも、棒男 は、すかさず後を追いかけ、涼さんに攻撃を続けています。ああ、涼さん、この まま倒されてしまうのでしょうか…?わ!涼さんったら、貴章さんの陰に隠れま したよ。そんなことしたら貴章さんが攻撃されちゃう…あ、危ない、貴章さん! え!今何が起こったの?あまりにも一瞬の出来事で…。どうやら、貴章さんの キックが炸裂して、一発で棒男を倒してしまったようです!スゴイ、スゴ〜イ! やっぱ、貴章さんは、お強いんだわぁ〜!うぅぅ…強いオトコってステキ〜!
「まだ未熟だな」
そうそう、涼さんはまだまだ未熟なんですよ。ガチャガチャなんかばっかやって るから、進歩がないんだわ。少しでも貴章さんに近づけるよう、努力しなくちゃ。 …って、あれぇ?貴章さんが戦列を離れて、物陰に…さすがにお疲れになった んでしょうか。それとも、涼さんが貴章さんに頼りきりで手抜きしてるから、鍛え るために、あえて1人にしたんでしょうか?うん、きっとそうだわ!そうに決まっ てる!涼さん、頑張ってね〜!ところで、貴章さん、何をなさってるんでしょう。 物陰から何かを窺ってるみたいですけど…。ちょっとお話を伺えないかしら? 元々、今日は私のインタビューに答えてくださる予定だったんだし…。
「…あの〜、貴章さん」 「悪いが話は後だ」 「でも…あの、ちょっと…」
あぅ…そんな、逃げなくたっていいじゃないですか。貴章さんったら、あっと言う 間に移動なさってしまって…。ま、仕方ないか!お取り込み中みたいだしぃ…。 今度はあそこで、建物の角から何かをご覧になってます。いったい何があると いうんでしょうねぇ。それにしても、建物の壁にぴったり身を寄せて、用心深く 角の向こうを窺う様子、決まってますね〜!まるで、スパイ映画か何かみたい でカッコいいですぅ。あぁ、あの引き締まった横顔、なんて凛々しいんでしょう! ずっと眺めていたいわぁ…うっとり〜。ん?涼さんが、こちらにいらっしゃるわ。 バトルは片付いたんでしょか?そう言えば静かになったかも…。マッドエンジェ ルスたちは、いったい…?涼さん、まっすぐに貴章さんの所に向かわれます。
「貴章…なんで途中で…」 「芭月、こっちだ」 「ん…?」
あっ、お二人が走り出しました。私たちも続きましょう!カメラさん、行くわよ! お二人はあそこです。あ、あれは!…テリーです、テリーがいました!そうか、 貴章さんは、テリーを見張ってたんですね〜。考えてみたら、元々はテリーを 倒すのが目的でしたものね。私、すっかり忘れてました〜。でもさすが、貴章 さんだわぁ!ちゃんと先のことを考えていらしたなんて…。
「芭月、下がっていろ。こいつは俺が倒す」 「この野郎!なめるんじゃねえ!」
わっ!テリーったら鉄パイプを!あ、でもすぐに涼さんがそれを掴みました。
「見苦しいぜ、テリー。最後ぐらい、フェアにやれ」
そうそう、仮にもマッドエンジェルスのヘッドなんだから、正々堂々と闘わなくっ ちゃねぇ。貴章さん、頑張って〜!そう、投げ飛ばして、そこでトドメを…って、 わっ、テリーがいきなり砂を!たいへん、貴章さんの目が〜!大丈夫でしょう か?も〜、テリーったら、どこまで卑怯なの〜!
「左だ!」
涼さんのアドバイスで、貴章さん、上手くテリーの攻撃をかわして、逆にその脚 を取りました。そして、ついに渾身の一撃を!わ〜、決まった〜!貴章さんが 見事にテリーを倒しましたぁ!すご〜い。貴章さん、おめでとうございま〜す! …ん?なんか涼さん、テリーの胸ぐらを掴んで問い詰めてるみたいですねぇ。
「そんなに会いてぇなら、泳いで行きな…」 「くそっ!」
あ、涼さんも一撃を加えました。これでテリーも、当分大人しくなることでしょう。 メデタシ、メデタシ!ふぅ〜、安心した途端に、どっと疲れが…。今、何時でしょ うか?もう、立ってられません。失礼して座らせていただきます。壁に寄り掛か りたいわ。なんか、意識がモウロウとしてきちゃって…。あぁ、瞼が…重い……
…ん、ここは?あ、そうだわ、私、リポート中に眠くなって…。もしかして、寝てま した?し、失礼しました!あれからどれくらい経ったんでしょう?なんかだいぶ 明るくなってなってきましたね。もうすぐ夜明けでしょうか?あのお二人は、どう なさったのでしょう?え、あちらにいらっしゃるんですか?じゃ、私もこうしては いられませんね。お二人の所へ行ってみましょう。よ〜し、あとひと頑張り〜! あ、いたいた!あそこですね。それにしても、息の合ったコンビプレイ、ほんと お見事でしたよね?力を合わせて大勢の敵を撃破し、朝焼けの海に向かって 佇むお二人の雄姿、なんと清々しく、美しいんでしょう!眩しいくらいです。
「結局…藍帝に会えなかった…」 「あとを…追うのか」 「このまま、あきらめてたまるか! だけど…どうやって…」
せっかく、貴章さんのお蔭で、マッドエンジェルスを倒せたというのに、結局は、 藍帝に、逃げられちゃったみたいですね。涼さん、もう諦めるしか…
「親父に話しておく」 「え?」 「お前に手を貸すように、親父に頼んでやるよ」
まあ、貴章さん、お父様に頼んであげるんですか?なんてお優しいの〜!
「貴章…」 「また後で連絡してこい。いいな」
あ、貴章さん、もうお帰りになっちゃうんですかぁ!まだインタビューが…って、 今日はもうムリですよね。じゃあせめて、お宅までご一緒させてください。
「貴章」 「なんだ?」
だから〜、涼さん、呼び捨ては失礼ですってばぁ!
「ありがとう」 「バカ言え。それは俺のセリフだ」
うぅ…シ、シビレます…。カッコよすぎです、貴章さん!ステキすぎて、寝ぼけた 私の脳みそが、とろけてしまいそうですぅ。私にも言ってください、そのセリフ! ああ、やっぱり貴章さんは最高だわ!私、貴章さんのお傍にいるだけで、最高 に幸せ…。ずっと、お傍においてほしいわ。貴章さん、私をお嫁にもらって〜! 私、頑張っていい奥さんになりますから、二人で暖か〜い家庭を作りましょう! もう、ホクホク弁当の毎日とはサヨナラですよ。私が、愛情たっぷりの手料理を 食べさせてあげますからね。はい、貴章さん、ア〜ン…なんちゃって、うふっ! …ん…あれ?…貴章さん?えっ!まさか…お帰りになっちゃったんですかぁ! そんなぁ、いつの間に?ぜひ、ご一緒したかったのに〜!どんな豪邸に住んで いらっしゃるのかも見てみたかったしぃ…。んも〜、しょうがない!カメラさん、 家まで送ってってね!え?あ…まだカメラ回ってましたね。
スミマセン!お見苦しいところをお見せしてしまって。何しろもう、バテバテで、 頭が働かなくて…。今回のリポートは、これでおしまいです。新横須賀港から 天龍丸
友貴がお送りしました。それではまた、次回をお楽しみに〜!

リポート Vol.
9
皆さん、こんにちは!天龍丸
友貴です。え〜、ご存知のように、昨夜、ようやく 貴章さんにインタビューできるはずだったんですけど、思わぬ事態が発生して 結局私は、今朝まで緊迫したリポートをお届けすることになってしまいました。 もう、くたくただったので、家に帰るとすぐ、ベッドに倒れこんだんですよ。でも、 それも束の間、緊急連絡が入って、再び、ここ新横須賀港に来ることになって しまいました。というのも、ついに涼さんが今日、香港に発つことになったという のです。それじゃあ、ノンビリしてられませんよね!涼さん、よかったですね!
というわけで、あちらには、グリーンのバッグを肩にかけた涼さんが、停泊中の 船を見つめて立っていらっしゃいます。あの船に乗って、香港に旅立たれるの でしょうね。ようやくこの時を迎え、涼さんは今、どんなお気持ちでしょうか…。
「お前のバカさかげんには、つくづくあきれるな」
あ、貴章さん!いつの間に…?お父様もご一緒です。
「おかげで龍札は食い止められた。これは、ささやかな礼だ」 「本当に、ありがとうございます」
約束どおり、貴章さんがお父様に頼んでくださったんですね〜。さすが貴章さん は頼りになるわぁ!
「お前は無鉄砲な奴だから、心配だぜ。俺がついて行く」
そうそう、無鉄砲…ん?貴章さん、今、なんて…?
「1人で行かすわけにもいくまい。それに、藍帝の動きを我々も知っておく必要 がある」 「と、いうことさ」
…と、いうことさ…って、え〜!貴章さんも香港に行っちゃうってことですかぁ! そ、そんなぁ…聞いてませんよぉ!涼さんって、仇討ちに行くんでしょ?なんで、 他人の仇討ちについていらっしゃるんですか?第一、危険じゃないですかぁ! そもそも仇討ちなんて、無謀すぎるんですよぉ。涼さん、もうあきらめましょ〜!
「…その奥義、燕旋擺柳を君に教えよう。…貴章」 「はい」
えっ?貴章さんがお父様に呼ばれて胸の前で手を…。か、かっこい〜っ!
「これは相手の攻撃を利用して投げる技だ。まず、型を説明する。よく見ておき たまえ」
わぁ、貴章さんが、さっそうと身構えました。例の独特な構えです!いつ見ても 凛々しいわぁ。今からお二人で技の実演をなさるんですね?お父様も同じ構え をなさいましたが、なかなかの貫禄ですね〜。そして、説明しながら実演を…。 お父様の拳法は初めて見ますけど、動きも滑らかで、達人ぶりが窺えますね。 さすが貴章さんのお父様だわ…って、きゃっ!貴章さんが投げ飛ばされた〜! いくらお父様とは言え、ヒドイわ〜!仰向けに倒れたところに、トドメ…までは、 刺されてませんけど、貴章さん、思い切り背中打ってますよね。大丈夫でしょう か…わっ、例によって脚を回して起き上がられましたぁ!うぅ、シビレる〜っ!
「まずは体さばきからやってみたまえ。1歩だけ重心を後ろに移すのだ」
涼さん、貴章さんがあそこまでしてお手本見せてくださったんだから、頑張って ね〜!あ…あれ?重心を後ろに移すだけのはずが、脚まで蹴っちゃって…
「私の目に狂いはなかった。すばらしい才能だ。だが、燕旋擺柳は相手の攻撃 をとらえてこそ、身についたと言える。貴章、相手を」 「えっ?」
相手を…って、投げ飛ばされろってこと?
「短期間で身につけるには実戦が必要なのだ。お前は本気で打ち込みなさい」 「分かりました」
まぁ!貴章さん、なんて従順なの!?お父様のおっしゃることは絶対なのね。 さっそく構えを取りました。
「始め!」
今、貴章さんが涼さんに突きを…涼さんがその腕を取って…キャ〜、貴章さん を投げ飛ばしましたぁ!そして、仰向けけに倒れた貴章さんに、なんと拳を! 涼さん、そこまでしなくたって…。でも、さすがは貴章さん、グッとこらえていらっ しゃいます。あ、また脚を回して起き上がられました。う〜ん、なんて優雅な動 きでしょ!そして、大きなため息を…そりゃそうですよね〜、お疲れ様でした!
「よろしい。上できだ。君は予想以上の才能を持っている」 「いえ、お二人の指導のおかげです」
そうそう、貴章さんが、相手をしてくださったお蔭ですよね!
「この燕旋擺柳は、相手の攻撃を読んでこそ真価を発揮する。まだそのタイミ ングがつかめぬなら、もう少し練習してみるかね?」
えぇっ!まだ貴章さんに投げ飛ばされろって言うんですかぁ?
「いえ、もう大丈夫だと思います」 「そうか。今の私にできることはここまでだ」 「このご恩は忘れません」
あ、もう大丈夫なのね?よかった!そうよぉ、貴章さんのご恩、忘れないでね!
「行くか…」 「はい」
行く…ってことは、もしや貴章さんも…?いや〜ん、貴章さん、行かないで〜! …ん?貴章さんが空を見上げて…キャ〜〜ッ!涼さんの頭上に鉄骨がぁ…
「危ない!」
あ、貴章さんが涼さんの元へ!! うわ〜〜〜っ!!
大変なことが起きてしまいました!貴章さんが地面に倒れていらっしゃいます。 落ちてきた鉄骨から涼さんを護るため、とっさに飛び出して、転んでしまわれた ようです。もうちょっとで鉄骨の直撃を受けるところでした〜。ふぅ、まさに危機 一髪!あ、立ち上がられました!どうやらご無事のようです。よかったわぁ…
「芭月!」
えっ!あれ…?涼さん、どうしたんですか?ナンか、倒れていらっしゃるみたい ですけど…。あ、もしかして、鉄骨、当たっちゃってました?…うわっ!上から、 何か降りてきました〜!あぁ、以前、第8倉庫に現れた怪しい男です!コイツ が鉄骨を落とした犯人ですね?なんて執念深いんでしょ!
「クケ〜ッ!お前、香港行けない。ビコーズ、俺様に負けるから、クケ〜ッ!」
わっ!いきなり貴章さんに襲い掛かって来ました〜!一難去って、また一難! 貴章さん、大丈夫でしょうか?…あ、貴章さんの回し蹴りが炸裂!一瞬にして 怪しい男は、海の中に吹っ飛んでしまいました。さすが貴章さん、お強いわぁ!
「芭月!」
今、貴章さんが、倒れている涼さんに駆け寄りました。どうやら、さっきの鉄骨 がバウンドして、涼さんの脚に当たったようです。せっかく貴章さんが警告して くださったのに、涼さんったら避けられなかったみたいですね。
「これでは、旅はできまい」
あぁ、そうでしょうねぇ。涼さん、ほんと未熟なんだから…ん?ってことは、香港 行きはナシですね!貴章さんも、お出掛けにはならないんだわ。よかったぁ!
「芭月、心配するな。お前の代わりに、俺が仇を討ってやる」 「…き、貴章…」
ええ〜〜〜っ!!貴章さんが仇討ちを〜?…ってことは、もしやお一人で香港 にいらっしゃるつもりですかぁ?ダメですよぉ、そんなの〜っ!
「あの若者は心配ない。朱元達の居所は今は分からない。代わりに信頼できる 人物を紹介しよう。桃李少…香港の老師の一人だ。住所はここに入っている」
貴章さんが、お父様から封筒のような物を渡されました。
「ありがとうございます、父さん。では、いってまいります!」
うわ〜ん、貴章さんが行ってしまわれる〜!いや〜っ、行かないで〜っ!まだ インタビューも済んでないじゃないですか!お話聞かせてくださるって言うから、 楽しみにしてたのにぃ!第一、貴章さんのいない横須賀なんて寂しすぎます! そもそも仇討ちなんて、今どき流行りませんよぉ!それに、いくら貴章さんでも 危険ですってばぁ!貴章さんに何かあったら、私、生きていけません!お願い だから行かないで〜!…って、あぁ、もう船のタラップを上ってしまわれました。 そして今、船の中へ。うぅ…本当に行ってしまわれるんですね、貴章さん……
…分かりました。しばらくお会いできないのは寂しいですけど、私、貴章さんを 信じてお待ちします!考えてみたら、仇だろうと何だろうと、貴章さんなら、きっ とすぐに見つけ出し、あっという間に片を付けてしまわれるに違いありません。 そうよ、そうに決まってるわ!だったら、それほど待たなくても済むんじゃ…? お帰りになったら、今度こそ、じっくりとインタビューさせていただくわ!そして、 私たち二人の将来についても、たっぷり時間を掛けて…。うふっ、楽しみ〜! よ〜し、そうと分かったら、元気を出してお見送りしなくっちゃ!あっ、船が動き 出しました!貴章さんは、どちらにいらっしゃるのでしょう…?あ、あちらです! ヘサキにお姿が見えます!やっぱり貴章さんは、どんな場所でも絵になります ね〜。さっそうと風に吹かれるお姿、なんて男らしいんでしょう!もうウットリ〜。 あのお姿をしっかりと瞼に焼き付けて、お帰りを待つことにします。貴章さん、 ご無事で帰ってきてくださいね!ここからでは声は届かないでしょうけど…
「貴章さ〜ん、いってらっしゃ〜い!お身体に気を付けてくださいね〜〜っ!」
あぁ、お姿がどんどん小さくなっていきます。貴章さん、どうかお元気で!この リポートのお蔭で、お会いできて嬉しかったです!貴章さんを追い掛け回した 日々、とっても幸せでした。涼さんに感謝しなければ…って、あ!そう言えば、 涼さん、ケガされたようですが、どうなったのでしょう?見当たりませんけど…。 えっ、病院に運ばれたんですか?ああ、そりゃそうですよねぇ。お大事に〜! あ、あちらでは、貴章さんのお父様もお見送りなさってます。きっと貴章さんを 信頼していらっしゃるから、安心して送り出してるんでしょうねぇ。そうこうしてる 間に、貴章さんを乗せた船もあんなに小さくなって、美しい夕焼けの中で、黒い シルエットになってしまいました。これからの貴章さんの旅が、あの夕焼けのよ うに輝かしいものになりますよう、祈らずにはいられません。…あっ、一番星!
…というわけで、「一章」のリポートは今回が最後です。私の至らないリポートに 毎回お付き合いくださった皆さん、本当にありがとうございました!新横須賀港 から天龍丸
友貴がお送りしました。ぜひまた、どこかでお会いしましょうね!
― 新シリーズにつづく? ―
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